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June 2013 の投稿一覧です。
カテゴリー: 総合
投稿者: maruzen
旺盛な出店を見込む外食産業が、店舗運営の主力となるアルバイトの人手不足に直面している。コンビニエンスストアやショッピングセンター(SC)が出店攻勢を強める中、アルバイト人材の奪い合いが起き、平均時給は上昇の一途をたどる状況だ。各社は、手元の人材の有効活用や、働きやすい職場環境づくりを急いでいる。
 オフィスビルに近い、スターバックスコーヒー(スタバ)の南青山2丁目店(東京都港区)の岩本剛店長は最近、欠員の出ていたアルバイトを一気に3人採用した。急な欠員が生じた場合、カバー要因の確保は簡単ではなかったが、スターバックス コーヒー ジャパンが大手人材会社と共同で作り上げた人材登録システムの活用が奏功した。
 アルバイト先として人気の高いスタバとはいえ、採用に至るまでには面接をはじめ、一定のプロセスが必要となる。最近では外食全体のアルバイト不足もあり、「地域によっては募集に対して、条件がぴったり合う人が少ないケースが増えてきた」(同社人事部)という。
 システムの登録者には、過去にスタバでのアルバイト経験を持つ人材も含まれ、勤務シフトの条件が合えば、即戦力ばかりだ。南青山2丁目店で採用された元会社員の女性(27)は学生時代、スタバで2年間のアルバイト経験があった。 女性は「登録してすぐに連絡が来た。経験者にはよいシステムではないか」と話す。岩本店長も「人が足りなくても、店は営業しなくてはいけない。サービスに支障が出るところだったので、加入はありがたかった」と胸をなで下ろしていた。
 人材会社インテリジェンスの提供するアルバイト求人情報サービス「an」によると、外食産業をはじめとする「フード系」アルバイトの求人数は3年以上前年比プラスが続き、4月は前年比40.3%増の大幅プラスとなった。フリーペーパーには、レストランやラーメン店からの求人が絶えない。
 背景にあるのは、外食の出店数の増加だ。日本フードサービス協会によると、全国の飲食店舗数は4月まで22カ月連続の前年同月比プラス。今年70施設以上がオープンする計画のSCにも、外食テナントが多く入る。
食の安全・安心財団が14日発表した2012年の国内外食産業の市場規模は前年比1.5%増の23兆2386億円となり、5年ぶりに前年を上回った。一昨年3月の東日本大震災の反動で1世帯当たりの外食費支出が増えた結果、拡大に転じたためとみられている。インテリジェンスが合同面接会を企画したSCでは、例年以上にテナントの参加率が高く、担当者は「業界の危機感を感じた」という。
 小売りとの競合も激しい。コンビニ大手3社は12年度に国内で計約3200店を出店し、13年度も計約3900店を計画する。立地の面でコンビニより不利な条件が多い外食は、時給を上げるといった動きで対抗策を強いられ、4月のフード系アルバイトの時給は16カ月連続でプラス(「an」調べ)となった。
 アルバイト人材獲得に向け、外食各社はあの手この手で知恵を絞っている。カフェレストラン「ダッキーダック」を展開する東和フードサービスは、アルバイトの欠員に備え、ヘルプ専門の要員7人を採用。即戦力として現場に送り出せるよう研修に取り組んでいる。牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスも、店舗間でのアルバイト人員の融通に余念がない。一方、人手不足の一因ともなっている早期離職対策として取り組んでいるのが、職場環境の整備だ。
 ファミリーレストラン大手のすかいらーくは昨年秋から、採用したアルバイトに最初の3日間、オリエンテーションと業務に関する座学研修を1日当たり計50分~1時間実施している。チームのコミュニケーションを円滑にするだけでなく、働き始めにありがちなミスの防止効果も狙っている。
 同社の社内調査によると、3カ月以内の短期間で辞めるアルバイトのうち、大半が実働20時間以内での離職だったが、取り組み実施後は20時間以内の離職が大幅に減った。「アルバイトのサービス意識が向上した」(都内の店長)、「早くから職場の仲間に入れるという安心感がある」(36歳の男性アルバイト)など、現場からも好評を得ている。
 景気にようやく明るさが戻りつつある中、事業拡大に向けた出店を加速する外食産業。人手不足は出店戦略のアキレス腱になる可能性もある。その解決策は今後の成長の鍵を握りそうだ。
カテゴリー: 総合
投稿者: maruzen
牛丼業界の「第三極」「台風」とも言われるほどの勢いを見せていた「東京チカラめし」も、ここへきて業績の低迷が見られるようになってきた。

 チカラめしは「彗星のごとく出現した、牛丼業界のニューフェース」(外食業界関係者)として、11年6月に池袋に1号店を開業以来、首都圏の主要駅を中心にしたドミナント(集中)出店で12年9月に早くも100店出店を達成。多い月は15店も出店するなど、業界参入からわずか1年3カ月の急拡大ぶりだった。

 牛丼と言えば牛肉を鍋で煮る牛丼が常識の牛丼市場で、牛肉をオーブンで焼く「焼き牛丼」で差別化を図ったのが特徴。タレで味付けした焼き肉を丼めしに盛ったボリューム感が、ガッツリ食べたい学生や若いサラリーマンに受け、瞬く間に人気牛丼チェーンになった。

 12年8月からはFC(フランチャイズ)加盟店募集も開始。チカラめしを展開する三光マーケティングフーズは「14年中に直営とFC合わせて500店を目指す」との積極姿勢を見せていた。しかし、それも束の間、昨秋から出店ペースは急速に鈍り、9月の新規出店は3店、10月も4店と減速し、13年6月1日現在の店舗数は、首都圏、群馬県、大阪府、兵庫県に、合わせて132店にとどまっている。

 出店ペースの減速とともに、三光はメディアに出店の中期目標をPRしなくなった。そして減速と軌を一にするかのように、三光の業績も低迷している。

 同社が今年5月10日に発表した13年6月期第3四半期決算(12年7月-13年3月の9カ月累計)によると、売上高は前期比1.9%増の196億円を確保したが、営業利益は同89.1%減の1.8億円と大幅な減益に沈んだ。最終損益に至っては1.5億円の赤字だった。

 同社はこの決算期間中、チカラめしを53店新規出店する一方で、早くも既存店が16店も不採算になり閉鎖、純増は37店にとどまっている。チェーン拡大ペースが急速に鈍ったのもうなずける。

 同社は通期の業績予想も、すでに2度も下方修正している。第3四半期決算と同時に発表した2度目の通期下方修正では、売上高が前期比0.4%増の260億円、営業利益が同97.7%減の0.4億円、最終損益が5.7億円の赤字となっている。

 同社はこの業績予想について「主力の居酒屋事業の売上低迷、東京チカラめし事業の新規出店計画未達、食材の価格高止まりなどが原因」と説明している。

 だが、業界関係者は「売上高の8割程度を占める『金の蔵Jr.』など居酒屋の業績不振に効果的な手を打てなかったのに加え、デビュー当初は出店ラッシュを様子見していた牛丼御三家が、昨秋辺りから本格的な『チカラめし包囲網』を敷いたのが、業績低迷の真因」と見ている。

 つまり、チカラめしに限って言えば、すき家、吉野家、松屋の牛丼3強(牛丼御三家)が揃って“チカラめし潰し”にかかってきたというわけだ。

●迫る御三家のチカラめし包囲網

 そもそも、三光が牛丼事業に参入したのは「本業の居酒屋不振を立て直せず、その不振をカバーするのが目的だった」(同)と言われている。

 1975年に個人営業の定食屋からスタートし、91年に開業した個室型居酒屋「東方見聞録」のヒットで居酒屋チェーンを拡大し、同社は成長してきた。09年に開業した全品270円均一の「金の蔵Jr.」は「低価格居酒屋ブーム」を巻き起こし、居酒屋業界の麒麟児と言われた。

 ところが低価格居酒屋ブームは長続きせず、11年に入ると「ブームは終わった」と居酒屋業界で言われるようになった。同社の営業利益も、10年6月期をピークに減少に向かっている。

 そこで前述の牛丼事業参入になるのだが、今のところ「なぜ牛丼だったのか?」は詳らかではない。ただ、チカラめしがまだ昇竜の勢いにあった昨春頃のメディアの取材に対して、同社の平林実社長が「居酒屋は日常の息抜きの場としてたまに利用されるだけだが、ファストフードは日常生活の一部であり、ガスや水道並みのインフラになっている。まだまだ伸び代がある。特に牛丼市場は大手がたったの3社。そもそも30年にわたって新規参入がなかったのが異常。牛丼市場には大きなチャンスが広がっている」と語っている。つまりは「ラーメンと並ぶ国民食」と言われる牛丼の、市場の奥深さに魅入られたのかもしれない。

 そして「後発が先発と同じ土俵で勝負すれば負けるのが当然。だからニューアイテム(焼き牛丼)で先発と勝負した」(平林社長)と語っている。

 こうした平林社長のチャレンジに共感したのか、チカラめしの失速が見え始めた今春まで、メディアの「チカラめし礼賛」は続いた。

 例えば、12年12月4日付「NEWポストセブン」は昨年12月、「チカラめしは売上高、店舗数共すでに業界5位の神戸らんぷ亭を抜き、4年以内の1000店に向かって驀進している。今の勢いが続けば4位のなか卯も抜き去り、業界の第三極に躍り出てくる可能性が十分ある」と報じた。

 こうした報道の追い風などもあったためか、三光の平林隆広専務は今年2月9日付「日本経済新聞(電子版)」の取材に対して「14年6月期に牛丼が居酒屋を抜いて当社の主力事業になる。今期も100店出店する」とチカラめしの急成長に胸を張っていた。

 ところが、その足元で御三家の「チカラめし包囲網」の輪が縮まっていた。

 御三家のチカラめし包囲網は、御三家の「プレミアム丼戦争」というかたちで始まった。そしてプレミアム丼戦争の直接的な動機は、安売り競争からの脱却だった。

●煮る牛丼で御三家へ対抗

 まず、松屋が12年8月に「焼き牛めし」(380円)を発売、次いで吉野家が同年9月に「牛焼肉丼」(480円)を発売、最後にすき家が同年10月に「豚かばやき丼」(630円)発売というかたちで、御三家の「焼き肉丼」が揃い踏みした。

 いずれも定番の「煮る牛丼」と比べ、価格を高めに設定、「煮る牛丼で得られない味と食べ応えで、値段の底上げを図っている」(業界関係者)のが共通。プレミアム丼と言われるゆえんでもある。

 プレミアム丼戦争が勃発した背景について、エコノミストの一人は「御三家の安売り競争が行き詰まる一方で、食傷感のある『煮る牛丼』より少々高めでも『おいしい牛丼』を食べたいという消費者層が出てきた。この新しい消費者層に活路を見いだした御三家が、相次いで『焼き肉丼』を投入したのが要因。当時、人気上昇中のチカラめしに触発されたのは言うまでもない」と分析している。そして「プレミアム丼戦争が、結果的にチカラめし包囲網の形成につながった」(同)という。

 こうして御三家に「牛丼市場の大きなチャンス」を阻まれた三光は、今度は「煮る牛丼」に参入した。

 今年3月に出店した新丸子店(川崎市)で煮る牛丼を発売したのを手始めに、5月末現在、9店で煮る牛丼を販売している。3~5月の間に新規出店したチカラめし11店中、9店が煮る牛丼店になっている。

 同社は「あくまで実験的な取り組み」と説明しているが、前出エコノミストは「御三家に行く手を阻まれ、焼き牛丼から消費者層の多い煮る牛丼への方向転換を図っているのは明らか」と言う。

 一方、業界関係者は次のように分析する。

「焼き牛丼より調理が簡単で、パートの訓練期間を短縮できる。厨房の設備投資も軽い。客回転率の高い煮る牛丼へシフトすることで、業績回復を図ろうとしている。よほど資金繰りが苦しいのだろう。だが、これではチカラめしの差別化要素がなくなり、御三家とガチンコの低価格競争に引きずり込まれるだけ。『御三家と同じ土俵で勝負すれば負ける』との自戒は何だったのか」

 周囲から無謀と言われた「居酒屋から牛丼への転換」の行方に注目が集まっている。