料理の中にスタッフの髪の毛、昆虫、ビニールといった異物が混入し、クレームとなることは多い。今日もある店長から、お客様から「料理の中に髪の毛が入っている」とお叱りを受けたと報告があった。こうした異物混入によるクレームの報告を受けると、自分の店長時代を思い出す。
 その時も今回同様、お客様の料理に髪の毛が入っていた。それに気付いたお客様がスタッフにその事を伝えると、スタッフは謝罪もそこそこに、慌てて料理を持ち去り厨房に消えてしまった。
そのスタッフは新人で、彼にしてみれば「早く作り直さなければ」という一心から、急いで厨房に伝えに行っただけだ。しかし、お客様からは人の話もろくに聞かず、料理を持って逃げたように見えた。その態度が許せず、お客様が怒り出し、事務所で伝票を処理していた私がスタッフに呼び出された。
 クレーマーなら「今すぐ誠意を見せろ!」などと声を荒げて、正常な判断力を奪おうとするところだ。しかし、このお客様は、怒ってはいるがそんな素振りは少しもなかった。
こうした真っ当なお客様は誠意を持って応対すれば、店のファンになっていただける可能性が高い。だから私は、できる限りの誠意を示そうと心に決めていた。
 お客様が腹を立てている理由をじっくり伺い、不慣れな新人の判断ミスであることを説明して謝罪したところ、怒りは収まった。そして退店時に再度、挨拶に伺い「お食事をお楽しみ中のところ不愉快な思いをさせて申し訳ありませんでした。どうか私たちの店にもう一度チャンスをください」と言って、サービス券を手渡した。
 以来、そのお客様は店の常連になり、私が本社に異動してからも年賀状をやり取りする関係だ。思い出話を書いてしまったが、業務を見直して異物が混入するリスクを減らすことも私の仕事の一つ。どんな方法があるか、明日から研究してみよう!