外食チェーンが宅配サービスの拡大を進めている。店内で食べるよりも価格は1~2割ほど割高だが、買い物や調理に時間をかけたくない単身者や子供がいない共働き世帯、高齢者向けなどに需要拡大が見込めるためだ。節約志向の高まりで家で食事をする「内食」傾向が強まり、外食各社は苦戦気味。来店客の減少を補う切り札として“出前”に期待を寄せている。
 カレーハウス「CoCo壱番屋」を運営する壱番屋は、カレーの宅配店舗数を来年5月までに現在より10%増の688店に増やす。国内の全1141店舗のうち、約6割の店舗で宅配サービスを提供する。
 宅配では店舗より100円割高になるほか、注文の合計金額が2500円未満の場合は別途200円の配達料が必要になる。だが、事業は好調で、平成22年5月期の宅配事業の売上高は、前期比10%増の80億円になる見込み。既存店売上高は5月まで6カ月連続で減少しているが、「宅配の強化で店舗の客数減を補いたい」(経営企画室)という。
 外食チェーンの宅配サービスでは、10年から始めたすかいらーくが先駆的な存在だ。宅配事業の売上高は130億円程度ある。このうち大半を調理済みの弁当や総菜が占めるが、今月25日からは東京都と埼玉県のファミリーレストラン「ガスト」116店で、「食卓のミカタ」と名付けた冷凍総菜全19品の宅配を始めた。
 「食卓のミカタ」は、主菜と副菜がついた商品が690円、ハンバーグやチキン煮など単品が390~690円。これまでも冷凍総菜は扱っていたが、「単身者などに販売拡大が見込める」(広報室)と判断、一気に価格を200~500円引き下げ、本格的な販売に乗り出す。今秋までに、取扱店舗を全国のガスト700店に広げる計画だ。
 日本ケンタッキー・フライド・チキンも宅配店舗を24年3月末までに現在の約1・5倍の約150店に拡大する。定食屋の大戸屋は昨年秋以降、都内と埼玉県の合計3店で、調理済みの豚のショウガ焼きや焼きサバなどの宅配を実験的に始めた。「今後、扱い店を増やすか検討したい」(大戸屋)としている。
 日本フードサービス協会によると、5月の外食売上高は新規出店を含む全店ベースで前年同月比2・1%増と2カ月連続で増加した。ただ、ファミリーレストランは売上高、来店客数とも前年割れが続くなどしており、宅配に活路を見いだそうとする外食チェーンが増えている。
 民間調査会社の矢野経済研究所によると、20年度の食品宅配市場は前年度比4・0%増の1兆5844億円に伸長。共働きや晩婚化による単身世帯の増加で、25年度には1兆7922億円に拡大するとしている。