3月に入り、早くも桜前線の便りも聞こえ始めてくる頃だが、予想外の寒さがこたえたこの冬に、実はアイスクリームが空前の売れ行きだったという。
 例を挙げれば、サーティワン アイスクリームの好業績がその1つだ。2009年12月期の売上高は165億円(前年比11.0%増)、営業利益23億2000万円(同23.9%増)と増収増益だった。CM戦略に加え、バースデーの特典や携帯の会員サイトを設けたことが功を奏し、女子高生などの取り込みに成功した。
 “毎日食べても1ヵ月間(31日)、違うフレーバーを味わえる”という店名の由来通り、31種類以上の品揃えが、「種類が多い」「彩りがカラフル」と支持を集めているそうだ。若い女性たちの「アイス好き」は、春夏秋冬を問わず変わらないようだ。
 また冬のアイスといえば、こたつでアイスを味わう至福のひと時を思い起こす人も多いだろう。「この季節だけのご褒美」といった風情があるが、昨今のアイス人気は、不況のこの時期に外食を控え、自宅で食事を楽しむ層が増えたことも理由のようだ。
 このようなトレンドに合わせ、この冬メーカー各社は、冬季限定のアイス商品を投入した。ロッテは今季、「雪見だいふく」シリーズの冬季限定商品として、「雪見だいふく ダブル生チョコレート」を発売した。チョコアイスの中に2層の生チョコを入れ、全体をモチで包んだ高級感溢れる商品だ。
 また、ハーゲンダッツジャパンは、徳島県河内村のみで栽培される高級いちご「ももいちご」を使った「ハーゲンダッツアイスクリーム ラ メゾン 銀座『ももいちご』」を数量限定で発売。ももいちごの果汁と果肉が味わえる贅沢な逸品だ。
 その他にも、冬のアイスの名品は目白押しだ。2月4日掲載の日本経済新聞朝刊では、消費生活アドバイザー・コンサルタントが選ぶ「こたつで食べたいアイス」ランキングが掲載された。
 1位は「ピノ いちごミルク」(森永乳業)、2位は「黒たい焼アイス」(井村屋製菓)、3位「明治リッチストロベリーチョコレートアイスバー」(明治乳業)、4位「白いたいやきアイス」(丸永製菓)と、「いちご」や「たい焼き」といったアイテムがトレンドになっていることがわかる。キーワードとなるのは、「季節感」や「リッチ感」だろう。
 これからの気温の上昇に伴い、アイスクリームの開発競争と商戦がさらに過熱することは必至だ。我々消費者の舌と目を楽しませてくれる新アイスの登場に、これからも期待したい。