近年、新たな夏の風物詩として定着してきたものがある。大手牛丼チェーンによる、うな丼合戦だ。
 競い合うのは、外食業界最大手のゼンショーが運営する「すき家」と、老舗の「吉野家」。
 両社は2007年から毎年、6月になると、うな丼を提供している。最も需要が高まる7月後半の土用の丑の日頃までの期間限定商品だ。その肝は、なんといっても、価格にある。
 開始当初の2007年は、吉野家が490円、すき家が550円と、うな丼としては破格の値段で話題をさらった。個人経営のうなぎ屋ではうな丼が1000~2000円というのも珍しくない。その半分程度とあって、サラリーマンが列をなして待つこともあれば、土用の丑の日には持ち帰り用の弁当販売が急増するなど、人気となっていた。
 ところが、今年、両社は大幅な値上げを余儀なくされる。うなぎの稚魚の不漁により、うなぎの価格が高騰しているからだ。すき家は2010年まではうな丼並盛の価格を550~580円の水準にとどめてきた。
 ところが、2011年には一気に100円値上げし680円に、今年はさらに100円値上げして780円で提供する。吉野家も今年は100円値上げして、650円で提供する。
 これほど価格をあげてまで提供する理由とは何か。
「完全に夏の定番商品になったから」(吉野家関係者)、「お客様は待っていてくれて、期待されているから」(ゼンショー関係者)だという。
 たしかに、ゼンショーでは毎年、土用の丑の日となれば、客の4分の1がうな丼を注文するというから期待はかなり大きいものがあるだろう。
 また、価格が上がったとはいえ、個人経営の街のうなぎ専門店より、まだ安い。さらに、注文してから提供されるまでの時間も格段に短いから、昼休みを利用したいサラリーマンには、やはりありがたい。それにしても、このうなぎ価格高騰はいつまで続くのだろうか。「うなぎの稚魚の生態はよくわかっていないことが多い」(ゼンショー関係者)ため現在のところ、来年以降はどのような価格になるのか、まったく想像がつかないという。「さすがに、うな丼並盛が1000円を超えるとなると、提供は難しいかもしれない」(関係者)。
 夏のうな丼合戦が今度も続くかどうかは、うなぎのみぞ知るというわけだ。今年のうな丼提供は、吉野家が6月11日の午後3時から、すき家は6月12日の午前9時から始まる。ちなみに、土曜の丑の日は7月27日金曜日。それまでに両社のうなぎを食べ比べておくのもいいかもしれない。