肉料理の中でも、ステーキや焼き肉などの「焼きもの」料理は、肉そのもののおいしさを堪能できる料理法だ。
肉を加熱して65度ぐらいになると、タンパク質が固まり始め、肉本来の風味や旨みが生まれる。ところが焼きすぎると、肉が硬くなるばかりか、旨みが凝縮された肉汁が流れ出してしまう。
やはり、肉は焼き加減が命。肉の焼き方に一家言持つ、「鍋奉行」ならぬ「肉奉行」を自任する人も多いのではないだろうか。
しかし、外食ならともかく、家庭で作るステーキは今ひとつうまくいかない、という人も少なくないだろう。家庭でステーキをおいしく焼きあげるコツとはどんなものなのだろう。
ヒレ、リブロース、サーロイン、ランプなどの柔らかい肉を選び、厚さ1センチメートル、100グラムの牛肉ならフライパンで片面を強火で30秒。最初に強火で肉の表面のたんぱく質を焼き固め、旨みの元となる肉汁の流出を防ぐ。これが第1のコツだ。
高温で肉の表面をガードしたら、あとは焦げないように火力を調節する。このとき、肉汁が逃げないように、肉を返すのは一度きりにとどめるのが第2のコツ。ちなみに、肉をフォークなどで押さえて焼き加減をチェックする人がいるが、せっかくの肉汁が流れ出してしまうので要注意だ。
しかし、肉のおいしさの決め手となるのは料理法だけではない。おいしい肉料理を食べられるかどうかには、その保存方法も大きく影響する。
最も一般的な肉の保存法は、言うまでもなく冷凍である。だが、生鮮食品を冷凍すると、食材の風味が落ちることはよく知られている。
その理由は、生鮮食品の約7割が水でできているためだ。このため、凍らせると氷結晶が食肉の細胞を傷つけ、解凍すると同時に肉汁が流れ出して、旨み成分が失われてしまう。冷凍や解凍のやり方1つで、せっかくのブランド牛肉もパサパサの味気ないものになりかねないのだ。
しかし、近年は冷凍技術も大いに進化を遂げつつある。その1つに、「微粒子凍結技術」がある。
これは、氷の微粒子により肉全体を均等に凍結し、解凍時の水分の流出を抑えるというもの。この方法なら、肉を冷凍保存しても、肉本来の旨みを保つことができるのだ。
料理の腕を一段とひきたてる、最先端の冷凍技術。この技術を応用すれば、家庭で焼くステーキを三ツ星レストランの味に近づけることも、あながち夢ではないかもしれない。