1.名称
古くからウシやヒツジなどの家畜で流産や腸炎を起こす菌として注目されていましたが、1970年代に入りヒトにも腸炎を起こすことが判明し、我が国においても1982年には食品衛生法で厚生省に報告する食中毒事件票の「病因物質の種別」の中に加えられ、食中毒起因菌として指定されました。カンピロバクター属の内で、ヒトに腸炎を起こす菌種としてカンピロバクター・ジェジュニとカンピロバクター・コリが知られていますが、実際に検出されるのはほとんどカンピロバクター・ジェジュニです。

本菌の形態は、右の電子顕微鏡写真からもわかるように、彎曲した螺旋(らせん)状構造を示しています。カンピロバクター(campylobacter)の語源は、ギリシャ語の “campylo”(カーブしたという意味の形容詞)と “bacter”(棍棒の意味の名詞)に由来しています。

2.症状

ヒトのカンピロバクター感染症では、発熱、腹痛、下痢、血便を伴う腸炎症状がみられ、治療をすれば2-5日で回復することが多いのですが、時に症状が長引く場合もあります。また、まれに虫垂炎や腹膜炎等の下痢症以外の症状がみられることもあります。菌が体内に侵入してから発症するまでの潜伏期間が比較的長く、一般に2-7日間かかるのも特徴です。

3.感染経路

下痢等の症状があるか、もしくは一見健康そうな家畜(牛、豚、鶏)、あるいはペット(犬、猫)などの腸管内にもカンピロバクターは存在し、これらの動物の排泄物により汚染された食品や水を介して人に感染します。また、比較的少ない菌量(100個程度)で感染が成立することから、小児ではペットやヒトとの接触によって直接感染することもあります。鶏肉などの肉類は本菌により汚染されている可能性も高く、そのため、これらの食品はカンピロバクター食中毒の主要な原因食品にもなっています。また、この菌は低温に強くて4℃でも長期間生存しますので、一般の細菌と同様に、または、それ以上に冷蔵庫の過信は禁物です。