昨年11月に開店した山梨県南アルプス市の「桃園ロボットラーメン」のラーメンが話題を呼んでいる。その名の通り、ロボットがラーメンを作る。ロボットの方も、店主の内田義平さん(60)が総額約2000万円をかけた「手作り」だ。
 店に入ると目の前にパソコンが1台。客はマウスをクリックして「しょうゆ」「塩」などの味、濃さ、脂の量などを5段階で選ぶ。
 ここから先は一部手動。店員が麺(めん)をゆで始めると同時にロボットのスイッチを押す。ゆで上がる45秒前になると、調合されたスープがベルトコンベヤー上の丼に注がれ、丼は店員の脇でぴたりと止まる。店員が麺とチャーシューやメンマなどを盛りつけ完成。この間、約2分。カップラーメンより早い。中太麺に鶏ガラのだしの利いた昔懐かしい味だ。スープの味は4000万通り以上になるという。
 内田さんは小中学生時代からラジオやステレオを組み立てるのが大好きだった。武蔵工大(現東京都市大学)や富山大大学院に入り、電子回路やモーターの研究に没頭。卒業後は食品会社で乾麺を包装する機械などの製作に携わって昨年退職した。
 10年前、会社に勤めながらそば屋を開いたほどの麺好きでもあり、自作ラーメンを友人に試食してもらったところ「濃い」「薄い」と評価はバラバラ。「ならば、お客さんに味を決めてもらうしかない」とロボット化を思いついた。
 03年ごろから自宅で少しずつ開発を進め、手に入らない部品は自ら図面を引き、鉄工所に製作を依頼した。
 ようやく昨年11月にロボットが完成したが、最初は味のないラーメンになったり、スープがこぼれてパソコンが壊れたりとトラブルが頻発。調整を繰り返して事業化にこぎ着けた。
 各種ラーメン500円。ミニラーメン300円。今後は麺や具をのせる作業の自動化やロボット自体の小型化を目指す。早ければ今年中に甲府市で2号店をオープン予定。内田さんは「ゆくゆくは量産して世の中に足跡を残したい」と意欲を燃やす。