高濃度の放射性セシウムを含む稲わらを餌として与えられた牛肉がスーパーなどの店頭で売られていた問題が日を追う事に大きくなっています。
 「牛でこれだけ大騒ぎになっているのだから……」。ある流通業の首脳は言葉を濁しました。察するに、この秋に起こる出来事としては新米から放射性物質が検出されたときの対応をこの首脳は心配しているのです。行政や生産者などはそうした事態が起きないように検査等に万全を期していることと思います。
 しかし、これまでも意識、無意識は別にして検査をすり抜けて市場に出回ってしまう産品がいくつかありました。
 市場はこうしたことを見透かしているのでしょうか。2010年産のコメの相場が上がってきています。コメ産地の東北が津波の影響で作付面積が減少し、供給不安があるから相場が上がっているようですが、最悪の事態も織り込んでいるような気がします。
 ここでのお話が杞憂(きゆう)に終わることを祈っています。  (日経MJ 田中 陽 氏)