飲食店にとって、暴力団は歓迎できないお客。特に酒類を提供する居酒屋やパブなどの開店に際し、いわゆる“みかじめ料(用心棒代)”として、植木やしめ縄などを法外な金額で買うことを要求してくることがある。
ある居酒屋では、店長が暴力団から毎月5000円程度で切り花を購入してきたが、オーナーの代替わりをきっかけに付き合いを拒否したところ、怒った暴力団員が店内で大暴れし、窓ガラスを割られるなどの被害を受けた。その上、「やくざが出入りする店」の噂がたち、店の信用はガタ落ちになり、売り上げも減ってしまったという。
 暴力団対策は、何よりも最初が肝心だ。「うちではこのような付き合いは一切やっていない」と、最初の要求時にはっきり断ることが大切。一度でも要求を受け入れてしまうと、しつこくつきまとってくるからだ。こうした対応の仕方をマニュアル化している店もある。「各店舗で返事をしないで、まず本部に電話すること」を店舗に周知させ、本部員がじかに話して断っている。
 逆に、あるチェーンのフランチャイジーは、「加盟店の1つなのでそういうことには応じられない」と言うなど、店舗レベルで応対するよう指導している。会社が相手になると、要求がよりエスカレートする可能性もあるからだ。それでも要求が続く場合は、即座に警察に通報するのが得策だ。1993年に施行された暴力団対策法(暴対法)では、みかじめ料を取る行為は禁止されており、「警察に通報します」という一言がより有効になっている。
 たとえ暴対法で特定していない行為に対しても、毅然とした態度を取るべき。弁護士によると、法律的には「帰ってくれ」と言っても居座る場合は不退去罪、正当な理由がなく金を要求すると恐喝罪、それ以外なら脅迫罪や強要罪が適用されるという。一方で、要求の手段は巧妙化している。例えば、お客からの出前の注文を受けられないように、店へ電話をかけ続けるなどの嫌がらせ。これは威力業務妨害罪の一つだが、立件が難しく、警察にはあまり期待できない。開店して2、3日は、近くの派出所からパトロールを増やしてもらうように要請するなど、地道な努力が欠かせない。