高級品がそろう百貨店で、ワンコインで買える格安弁当が続々と販売されている。不振続きの各店が、最も身近な食料品の価格を下げることで集客増を図る狙いだ。スーパーなどの300円を切る格安弁当よりはほんのちょっと高いが、高級志向が強い百貨店の弁当だけに「おいしい」と人気だ。
 日本橋高島屋(東京都中央区)は6月下旬から、「500円均一ワンコイン弁当特集」を始めた。平日午前11時半からのランチタイム限定で、「週替和風弁当」や「韓国風のり巻き」など計11種類。近くの会社に勤める調布市の女性会社員(28)は「昼食代は500円程度で済ませたい。デパートだと高い店の弁当も安く楽しめるのがうれしい」と、購入していった。
 同店は今春、弁当売り場の来店客を対象にアンケートを実施。昼食代や選ぶポイントなどを聞いたところ、昼食代は約700円で、低価格の要望もあったことから企画した。臼井利彦販売担当課長は「出費にメリハリをつける人が多い。昼食という日常でもデパートに来てほしい」と期待する。
 近隣のOLをターゲットにしたのは銀座松坂屋(同)。3月から「ワンコインOLランチ」を展開中だ。当初は4月末までの予定だったが、販売個数が1日150個が300個超と倍増したため、継続を決めた。現在は来月末まで、「夏野菜の揚げ出し豆腐丼」などの夏限定メニューなど計25種類がそろう。
 弁当を1個購入するとシール1枚を添付。同じ柄のシールを4枚集めると、サラダや果物がもらえる特典も。広報担当の柁原(かじわら)久江さんは「安い、おいしいだけでなく、イベントに参加するわくわく感を大事にした」と話す。
 中高年が多い周辺住民を意識したのが東武百貨店池袋店(豊島区)。おかずを野菜中心にして価格を500円台に抑えた。6月の売り上げは前年同月比で15%増と好調だが、担当者は「価格的には限界。百貨店ならではの付加価値で勝負したいのだが…」と複雑な心境だ。
 関西地方でもワンコイン弁当は大人気だ。阪神百貨店(大阪市北区)の地下1階食品売り場の「できたておかずや煮平」では、店頭にずらりと並ぶ。
 空揚げ弁当、精進弁当、焼きそばチャーハン弁当、幕の内弁当、冷やし中華…。品ぞろえが豊富で、男性でも満足できるボリュームとあって、お昼どきともなればOLや会社員らが殺到。連日ほぼ完売という人気で、甲子園球場でプロ野球の阪神戦がある日は特に売れ行きがよいため、普段より多めに用意するという。
 同百貨店ではワンコイン弁当を売り出す店は数多くあり、種類は売り場の担当者も把握できないほど。OLらに「おしゃれで、かわいい」と人気のランチボックスタイプのワンコイン弁当などもあり、各店がそれぞれに工夫を凝らす。
 担当者は「お客さんに満足してもらえるクオリティーがあるから、人気商品になれた」と胸を張る。
 アサヒビールが今年6月、昼食について全国20歳以上の男女計1511人を対象にインターネット調査を実施した。1日の昼食代のトップは「500円未満」(58・1%)。続いて、「500~700円」が21・9%、「700~1000円未満」が10・9%で、全体の8割が700円以下だった。
 また、男性の昼食は「手作り弁当」が31・5%でトップ。「市販の弁当」が25・6%、「外食」が24・8%だった。女性は「自宅で作る」が58・8%で最多。「手作り弁当」は29・2%、「市販の弁当」は21・1%だった(いずれも複数回答)。