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外食業界の一つの時代が終わる。

 投資会社の野村プリンシパル・ファイナンス(PF)傘下で経営再建中のすかいらーくは10月末までに、昨年来行なってきた創業ブランド「すかいらーく」の「ガスト」などへの転換を終了する。ついに日本から「すかいらーく」の看板が消える。

 1970年、「すかいらーく」は創業家の横川4兄弟がつくった日本初のファミリーレストランだ。今では当たり前となっているセットメニューやチェーン展開するための店舗運営ノウハウ、郊外型の店舗展開などの多くは、「すかいらーく」が率先して取り入れ、原型をつくり上げた。今ある外食企業のほとんどは、同社の手法をまねて成長を遂げていったといっても過言ではない。

 しかし2006年度に、過去に大量出店した店舗の老朽化や業態の陳腐化などから客離れが進み、最終赤字に転落。同年、経営再建のために野村PF傘下となった。08年にはその野村PFによって、業績不振を理由に創業家の3男である横川竟社長が解任され、野村PF主導で一気に店舗リストラが進められた。「すかいらーく」の看板が姿を消すことは「外食業界での歴史的役割が終わったということ」(大手外食企業幹部)だといえる。

 財務と店舗のリストラという“外科手術”が終わり、すかいらーくの経営再建はひと区切りつくことになる。次の段階は“リハビリ”だ。ただ、“リハビリ”は、「メニュー開発や業態開発、店舗オペレーションの再構築など、外食業に精通しているプロ中のプロでなければできない。すかいらーくに対して野村ができることはここまでだ」(同)。

 野村PFが早々にエグジット(保有株式の売却)する可能性は高い。この点について「今年中に具体化することはない。来年春くらいになるのではないか」(野村PF関係者)とささやかれているが、すでに大手外食企業や商社など複数社に野村PFは接触している。

 実際、“手術後”のすかいらーくは業界他社にとって魅力的に映るはずだ。

 今後の同社の主力業態となる「ガスト」は08年度下期(7~12月)から2半期連続で既存店売上高が前年を上回った。ファミレス御三家のうちの「デニーズ」と「ロイヤルホスト」が09年度上半期、同7~9%マイナスで推移していることからすれば、上出来の数字だ。「2社が回復する気配すらないなかで浮上したのは驚きだ。落ち込んでも立ち直る底力がある」と市場関係者も注目する。

 また「すかいらーくの工場は日本でもトップクラス。他社にはない技術とノウハウが蓄積されている」(大手外食企業幹部)。

 今でもすかいらーくグループの売上高は381億円を誇る。どこへ嫁ぐにも、外食業界の勢力図を大きく塗り替えることになる。