今回の日本政府の対応の中で最大の過ちは、東京電力の「計画停電」
を許可したことです。計画停電による経済的なダメージは、想定の
範囲を超えていると私は感じています。そもそもピーク時の電力を
抑えることができれば良いのに、「節電」と勘違いした「行き過ぎた
自粛」が散見されます。
 交通機関は運行量を制限し、築地に行っても魚も野菜もなく、公共の
建物を利用したコンサートなどは軒並み中止という始末です。関西
方面にホテルを借りきって“疎開”する人も出ているようです。
 これらの中には本来必要のない「自粛」があります。それによって
莫大な経済的な損失が生まれています。「これは東電が作り出した
人災」だと私は声を大にして言いたいと思います。
 東電が正しく説明をして、ピーク時の電力量を下げるための施策を
考えれば、乗りきれる事態です。私に言わせれば、朝早くから計画
停電を実施しても意味はないですし、今のところ週末も節電の必要性
は薄いはずです。
 この計画停電は今年の冬まで継続の見通しとのことですが、「全力」でこれを阻止する必要があると思います。
 試算すれば分かりますが、火力発電所の復旧や東西電力グリッドの結合などによって夏までに確保される電力を考慮すると、現状から最大で約25%程度の電力の削減を実現できれば良いのです。
 「サマータイム2時間」「事業所の操業曜日の平準化」「夏の甲子園
中止」「大口料金のアップ」など、私は削減策をいくつも提案しました。
 このようなアイデアを広く募集して、可能なものから実現していけば 良いと思います。それだけで「25%の電力削減」を実現することは可能でしょう。
 また政府は22日、東日本大震災の復興に向けた施策を統括的に担当する「復興庁」を設置する方針を固めたとのことですが、本当に必要なのは「省庁」ではなく「ビジョン」だと思います。
 阪神淡路大震災の後、神戸は復興しましたが、まさに「復興」しただけであり、「新しい神戸の街」として生まれ変わってはいません。これは「復興」を目的としたためです。東北についても同じことが言えます。
 高台に設計する新しい街、これまでに類を見ないコンセプトの漁港
 など、新しいものを創る「ビジョン」があれば、今だからこそ色々
 なことが実現できるはずです。ぜひ「復興」にとどまらず、新しい「ビジョン」を持った人がリーダーとして立ち上がって、新しい東北を創りだしてほしいと願っています。  大前研一氏