消費やマーケティングを考えるときに特定の年齢層を固定観念でみてはいけない、というのは鉄則です。しかしシニア層のデジタル生活がどんなものか、想像がつきにくいところがあります。続々と登場する機器やサービスを使いこなせているだろうか、とつい、余計な心配をしてしまいます。
 日本生産性本部が先日、発表した「レジャー白書2011」から、シニアのデジタル生活の一端がみえてきます。「レジャーのデジタル化」についての報告で目をひいたのが「情報通信機器・サービスを利用した活動」についての、年代・性別の調査でした。
 メールのやりとりは60代以上男女のほぼ3人に2人がしていて、他の年代を上回る比率です。60代以上女性の3人に1人が情報通信機器を使って「(楽しみとしての)ショッピング」をしています。
この比率は女性の他の年代より低いのですが、その差は最も高い40代に比べても10ポイント弱と、それほど数値が離れているわけではありません。
 さらに「(楽しみとしての)ショッピング」についての今後の意向をみると、60代以上の男女とも30代、40代より高い比率を示しています。いったん情報通信機器に親しんでしまえば、接触時間が長く、デジタルサービスを利用する密度も濃くなるのが60代以上の特徴かもしれません。
 さらにこれらのデータからは、生活のデジタル化という尺度でみると60代以上のシニア層は他の年代より格差が広がっている、と推測できます。「(楽しみとしての)ショッピング」を利用している人と利用意向がある人は60代女性の6割弱です。このグループと残りのグループでは流行への感度も消費意欲も格段に違うはずです。
 シニア層を対象にしたマーケティングについては日経MJの企画で何度も、取り上げてきました。手法はいろいろあるでしょうが、デジタル化の度合いで層化するのも一手かもしれません。レジャーへの参加意欲は消費への関心を映す側面があります。攻略が容易ではないシニア層ですが、消費のポテンシャルを過小評価するわけにはいきません。    (日経MJ 長田 正氏)