米マクドナルドが宅配サービス?そう、実は宅配するのである。「ビッグマック」中毒の米国人は大抵ドライブスルーに乗りつけるが、発展途上国では、もっぱらマクドナルドの方が運転するようになった。
 マニラからモンテビデオに至るまで、混雑した大都市でバイク部隊を動員し、出来たてのファストフードを宅配する。カイロの女子高生は、「外出して店で行列するのは面倒くさい」と話す。彼女は週に1度は「マックチキンコンボ」を電話で注文し、70セントの宅配料金を含めて毎回4ドル強使うという。
 マクドナルドは世界25都市で宅配事業を展開しており、さらに5~6都市を計画中だ。台北では1000人の配達員を擁して宅配を始めたばかり。今夏、上海では宅配サービス地域を上海全域に拡大する予定で、ベイルートとリヤドでも試験サービスを始める。
ここはカイロ。ドライブスルーはほとんどないが、大半の店が宅配を手がける 。1995年、他国に先駆けて宅配を導入したエジプトでは現在、同事業が全店舗の売上高の27%を占める。世界的に見ると、今年、宅配事業の売上高は合計1億1000万ドル超に上る見通し(昨年は9000万ドル)。216億ドルの売上高を誇る大企業にとっては微々たる金額だが、宅配事業は年率20~30%の成長を続けている。同社全体の成長率の3倍超に相当する伸びだ。
 利益率も高い。宅配サービスの利益率は、同社店舗で一般的な13~14%を上回る。50セントから1ドルに設定された宅配料金が電話注文の受け付けや配達員とバイクのコストをカバーするからだ。「テーブルを片づける必要もない」と欧米以外の事業を統括するティモシー・フェントン氏は指摘する。
 宅配事業は、イリノイ州オークブルックに本社を置くマクドナルドの発想の転換を象徴するものだ。55年の創業以来、本社はフランチャイズ経営の詳細を事細かに指示してきた。だが、数年前に収益の伸びが鈍化し始めると、試験的な事業を奨励し始めた。