渡邉さんは次のように指摘します。
「僕は、経営者としてのすべてを居酒屋で学んできた。店で額に汗し、お客様に様々
なことを教えられ、鍛えられてきた。介護、宅配、農業。今、ワタミが手がけている
ビジネスは、居酒屋で培ってきたノウハウに基づいて成立している。飲食というと、
すぐに水商売扱いされるけれど、それで立派に成果を上げることができている。つまり
、居酒屋経営をできれば、たいていのことは成し遂げられるのだ。最近、僕がテレビ
番組や講演会などで話していると『何だ、居酒屋のオヤジ風情が偉そうに』としばしば
批判されるのだけれど、冗談ではない。今、飲食店で真剣に働いている若者たちの中
にこそ、これからの日本を支える人材がいるはずだ」。

何という心強いメッセージでしょう。日々、飲食業界を取材する身として、少々胸が
熱くなりました。
ご存知のように、渡邉さんは今、ワタミの経営から徐々に身を引きつつあります。後継
社長の桑原豊さんに業務を託し、自らの新しい夢を追い始めようとしています。それは
実に潔く、素晴らしいことだと思いますが、一方で、渡邉さんが飲食業界から身を引く
ことに対し、「寂しい」「彼は外食を見捨てるのか」といった声があるのも事実です。
しかし、「居酒屋経営ができれば何でもできる」という一言で、これまで渡邉さんが
いかに誇りを持って居酒屋に携わってきたかを改めて知らされた気がしました。

渡邉さんは、若者が集う「居酒屋甲子園」についても、エールを送ります。

「彼らに対する様々な意見があるのは承知している。しかし、あれほど純粋な気持ち
で夢を語り合い、従業員を家族のように扱い、社会に貢献することを誓って仕事に取
り組んでいる若者たちがほかにいるだろうか。経営は、常にリスクと隣合わせにある。
順調に進んでいても、突然壁に突き当たることは少なくない。そんなとき、夢を持って
いること、仲間と思いを共有することが、何より支えになる。そう考えると、彼らはや
はり素晴らしい」。

今、飲食店は厳しい経営環境下に置かれています。毎日、しんどい思いをして、店に立
ち続けている経営者や従業員は少なくありません。それでも、我々は勇気と自信を持っ
て、立ち向かわなければならないのです。こんなご時勢だからこそ、「居酒屋経営がで
きれば何でもできる」という渡邉さんの言葉を胸に、強い気持ちで仕事に取り組みま
しょう。それが、きっと次のステップにつながるに違いないのですから。