コンビニエンスストア大手3社は、中国などアジア新興国を中心に海外出店を加速する一方、国内の店舗網強化にも乗り出す。3社合計の新規出店数は約2420店舗が見込まれる2011年度に対し、12年度は3割増の3100店規模と過去最高になる見通し。東日本大震災で社会インフラとしての機能が見直され、女性や高齢者などの来店者が増えている商機を逃さず、攻勢をかける。各社は総菜や生鮮品を拡充し、スーパーに対抗する構えをみせるが、消費者のニーズに応える品ぞろえだけでなく、価格面の魅力向上も勝負を分けるポイントになりそうだ。
 「コンビニの出店に飽和点はない。時代のニーズに合った商品を開発すれば、消費は掘り起こせる」。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼CEOはそう言い切る。現在、国内のコンビニ店舗数は約4万5000店。1店当たりの商圏人口は2500~4000人程度で、日本の全人口を基に計算すれば「約5万店が飽和点で、出店の限界」との見方が業界では多いものの、鈴木会長は意に介さない。
 傘下のセブン-イレブン・ジャパンは12年度に前年比150店増となる1350店の新規出店を計画。病院や大学、駅構内などにも積極的に展開し、現在の約1万4000店を数年後に倍増させたい考えで、実現すれば5万店の壁は一気に超えてしまう。
 強気の理由は震災後に伸びた来店客数と総菜の好調な売れ行き。昨年3~8月は1店当たりの1日の来店客数が既存店ベースで前年同期比2.2%増となり、全店では過去最高の1080人だった。また、総菜などの自主企画商品「セブンプレミアム」の売上高に占める構成比は震災前の昨年1月は5%弱だったが、12月には7%に上昇した。
 今後は高齢者向け弁当宅配サービスの強化やインターネット販売との融合を図り、より「近くて便利」な存在を目指す。
 これに対し、ファミリーマートの上田準二社長は「出店余地は5000店で、急いだ方がいい」と5万店を飽和状態とみなす。買収したエーエム・ピーエムからの転換を含めて新規出店はこの2年間で800店近くにのぼったが、12年度は前年比1.5倍の800店に上積みする。
 力を入れるのが、50歳以上の成熟した消費者を狙った商品開発だ。プロデューサーの残間里江子さんを所長に迎えた「おとなコンビニ研究所」を始動させ、11年11月に旗艦店を東京・代官山に構えた。キューバ産の葉巻を用意し、洋酒はコンビニとは思えないほど種類が豊富。有機食材や国産原料にこだわった加工食品や弁当も並ぶ。
 2600種類の品ぞろえのうち約700種類は通常店舗で扱っていない。若い家族連れやカップルの来店者も多く、「上質の商品を開発すれば若い顧客層も広がる」といった効果を生み、同社は展開の強化も検討する。
 12年度に800~1000店の出店を計画するローソンは、大半を野菜など生鮮品を扱う「ハイブリッド型」にする。2月末で全国10カ所となる直営農場を将来的に50~60カ所に増やし、供給態勢を整備。「スーパーの代わりを目指す」と新浪剛史社長は意気込む。
 ローソンが生鮮品を強化するのは、11年10~12月に生鮮品の売上高が前年同期の2倍で、特に総菜などの自主企画商品が品ぞろえの充実もあって4倍になるといった好調さが理由だ。同社は、健康志向をアピールする「ナチュラルローソン」や、生鮮品から雑貨までを低価格で提供する「ローソンストア100」など複数の販売形態を持つ。次に目指すのは、高齢社会のニーズをくみ取る健康関連商品の展開。調剤薬局を併設した店舗を増やす方針で、家族経営の薬局・薬販売店などにコンビニへの転換も働きかける。新浪社長は「これまで若い人の冷蔵庫だったが、これからは国民全体の冷蔵庫となり、健康の促進機能も考えたい」と話す。
 震災後は、電力不足で節電意識が浸透したこともあり、消費行動が変化。「近くて便利」が売り物のコンビニを利用する消費者が増えた。シティグループ証券の朝永久見雄マネジングディレクターは「生活に足りない部分を補い続けることで、コンビニは商圏が小さくても成り立ち、少子高齢化も有利に働く。成長産業の一つであり、今後は下位チェーンのM&A(企業の合併・買収)が活発になる可能性もある」と指摘する。
 コンビニ各社は、拡大が見込まれるアジア新興国の需要の取り込みだけでなく、国内でも熾烈(しれつ)な競争を繰り広げることになりそうだ。
中食の惣菜・弁当に注力しているコンビニの出店がこれだけ勢いがあると、外食産業には多大なる悪影響が及ぶと思います。今年は出店より退店の方が多くなるかもしれません・・・。厨房業界にとっても脅威な話です。
専務 小栗豊人